- 2008-03-09 (Sun) 22:35
- 社会
米大統領選は、現時点で、共和党はジョン・マケインが指名を確実にしている が、民主党はバラク・オバマとヒラリー・クリントンが指名を争っている状況 である。
他国の選挙であり、気にしても仕方ないのだが、民主党の指名候補争いが混戦 になっているということもあって、ウェブ上のニュースやブログの記事を読ん でいると、それぞれの立場からのフィルターがかかった報道や記事もちらほら 見えてきて、なかなか面白い。
各党の指名候補者選びのプロセスは複雑であり、完全に理解できているとは思 えないのだが、最初に簡単に書いておく。
米大統領選は、共和党、民主党が、各党を代表する候補者を指名することから 始まる。各党の指名候補者選びは、各州で行われるプライマリー(primary)と コーカス(caucus)という2つの方法によって進められる。大雑把に言って、 プライマリー(primary)は、投票所での無記名投票の結果によって代議員を選 出する方法であり、コーカス(caucus)は、党員集会によって代議員を選出す る方法である。各党ごとに、それぞれの州がプライマリーとコーカスのいずれ の方法をとるかは決まっている。なかには、民主党のテキサス州のように、プ ライマリーとコーカスを組みわせた方法をとる州もある。
各州のプライマリーやコーカスでの結果に応じて、その州の誓約代議員 (pledged delegates)が各候補者に配分される。共和党は、プライマリー・コー カスで最も得票率が高い候補者が、その州の誓約代議員を総取りするという方 式を採用している。一方、民主党は、プライマリー・コーカスでの得票率に比 例して誓約代議員が配分されるという方式を採用している。これも、民主党の 指名代表者選びが混戦となっている理由の一つである。
各州での指名代表者選びを経た後、各党の党大会が開催される。党大会におい て、誓約代議員は、各州のプライマリー・コーカスの結果にしたがって割り当 てられた候補者を支持することが決められているが、このほかに、いわゆる特 別代議員(super delegates)と呼ばれる、誓約をしなくてもよい代議員がいる。 特別代議員は、各州のプライマリー・コーカスの結果とは関係なく、党大会に おいて自由に支持候補者を選択できるのである。共和党の特別代議員はそれほ ど多くいないのが、民主党は特別代議員が全代議員の2割を占める。
通常、各州でのプライマリー・コーカスの結果によって、各党の指名候補者が 決まるので、党大会は指名候補者を推戴したお祭りになることが普通である。 しかし、今回の場合、民主党の指名候補者選びは混戦となっており、各州での プライマリー・コーカスの結果だけでは、指名候補者が決まらない可能性が高 く、党大会へ向けて、特別代議員の票の行方に注目が集まっている。
さて、3月4日に行われたオハイオ州、テキサス州、ロードアイランド州、バー モント州での民主党の指名候補者選びは、クリントンがオハイオ州、ロードア イランド州と、テキサス州のプライマリーで勝利し、オバマがバーモント州を 制した。テキサス州のコーカスはまだ最終結果が出ていない。
民主党のテキサス州の場合、同州に割り当てられた代議員数の3分の2をプラ イマリーで、残りをコーカスで決めるという制度が採用されているのだが、コー カスの集計に時間がかかっているのである。
どういうわけか、3月4日の結果に関して、クリントンの勝利をことさら強調し たような報道があるのだが、民主党は、各州の誓約代議員を得票率に比例して 配分するという方式を採用しており、且つ、両候補の支持に大きな差が開いて いるわけではないので、3月4日の結果、クリントンがオバマに対して稼いだ誓 約代議員の数はそれほど多いわけではない。むしろ、3月4日の結果を受けて、 クリントンが、土俵際で踏みとどまったという情勢分析が適切だろうと思う。
しかも、現時点の情報では、テキサス州のコーカサスではオバマが有利であり、 より多くの代議員を獲得しそうな勢いである。クリントンがテキサス州のプラ イマリーでより多くの代議員を獲得したといっても、コーカスの最終結果と合 算したときに、テキサス州の誓約代議員をより多く獲得するのがどちらかは、 まだ分からない。
いずれにせよ、テキサス州のプライマリーにおいてクリントンが稼いだ代議員 数の差は、コーカスの結果が出れば、より小さいものとなるだろうし、ことに よっては、オバマが、テキサス州のプライマリー・コーカスの合算でより多く の代議員を獲得する可能性があるということである。
さらに、3月8日のワイオミング州のコーカスはオバマが制した。
民主党の代議員の総数は4049人であり、指名候補者となるためには、その過半 数の2025人を獲得する必要があるが、クリントンは、引き続く各州の指名候補 選びで勝利を重ねても、民主党大会の前に、誓約代議員の獲得数に関してオバ マに追いつくことは難しいとされている。一方、オバマの方も、民主党大会の 前に、指名を決定づける誓約代議員を獲得することは難しい。
- Hillary’s Math Problem | Newsweek.com
- Clinton’s ‘math problem’ remains; ‘joint-ticket’ a possiblity? - USATODAY.com
こうなってくると、民主党の代表選出は、各州のプライマリー・コーカスの結 果とは関係なく、党大会で自由に票を投じることができる特別代議員に委ねら れる公算が高い。民主党の特別代議員は、現在796人で、全代議員の2割を占め る。特別代議員は、連邦議会上下両院議員、州知事、党委員会のメンバーから 成っていて、党の重鎮の意見を反映させることが意図されている。
しかし、民主党としては、特別代議員の票によって指名候補者を選ぶという事 態は避けたいだろう。各州での代表選びの結果、オバマが誓約代議員の獲得数 で上回ったにもかかわらず(そうなる可能性が高いが)、党大会での特別代議 員の投票で逆転され、クリントンが代表として選ばれることになると、各州の 代表選びで示された意思は何だったんだろうということになる。密室で決めら れたかのような不透明な印象がぬぐえないし、特に、若い支持者たちが離れて しまうことにもなりかねない。
ここにいたって、民主党の指名候補者選びで、フロリダ州、ミシガン州の再選 挙をしたらどうかという声があがっているようだ。両州は、党の意向にしたが わず予備選の日程を1月に前倒ししたために、党大会への代議員派遣資格を剥 奪されている。1月の予備選では、オバマはミシガン州に不参加、フロリダ州も 選挙活動を自粛したため、結果的にクリントンが両州で勝ったことになってい るが、再選挙となると、おそらくコーカスになると思われるので、クリントン 有利とは言えないだろう。これまでの選挙戦をみていると、コーカスではオバ マは強い。また、フロリダ州とミシガン州が数多くの代議員をかかえていると いっても、いずれかの候補者が圧倒的な差で勝利するとは思えず、結局は特別 代議員の票に委ねられる結果となるのでないだろうか。
クリントン陣営は、フロリダ州、ミシガン州の再選挙に勝って、それによって 誓約代議員の獲得数でオバマを追いつくことができないにしても、大票田に強 いということをアピールし、特別代議員の票に委ねることの正当性を主張する という戦略を立てているのかもしれない。
ともかくお金がかかる大統領選になることは間違いないようだ。
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