- 2007-05-13 (Sun) 1:46
- 日常
ポール・グレアム(Paul Graham) はLispプログラマーとして有名な人ですが,最近はエッセイも書いていて, ときどき読ませてもらっています.
ポール・グレアムの最近のエッセイ 「2種類の判断(Two Kinds of Judgement)」 で,世の中には次の2種類の判断があるということが書かれていました.
あなたについて判断すること自体が最終目的であるような判断.たとえば, 試験の成績をつけること,裁判で判決をくだすこと,競技会で勝ち負けを決め ることは,このタイプの判断です.
あなたについて判断することが他の何かの手段であるような判断.たとえ ば,雇用や投資に関する判断,デートにおける判断などは,このタイプの判断 です.
1番目の種類の判断は,あなたを正しく判断することが目的なので,判断が間違っ ているときには,それをアピールするための手順が用意されていることもしば しばです.判断が誤っていると思ったら,自分が不当に扱われたということを アピールすることができるわけです.
一方,2番目の種類の判断は,もともと,あなたについて正しく判断することが 最終目的ではなく,実際には,あなた自身について判断しているのではなく, 他の目的(誰を雇うか,何に投資するか)を達成するために,判断には多少の 誤りがあることを前提に,最適な選択をしようとしているわけなので,あなた について正確な判断ができなくても,本来の目的が達成できればそれでいいの です.
たとえば,あるスポーツのチームを作るために,選手を20人選ぼうとするときに, 20番目に良い選手を選考から落として,21番目に良い選手をチー ムに入れるという選択をしてしまっても,良いチームを作るという目的は達成 されます.20 番目に良い選手と21番目に良い選手の差は,判断の誤りの幅と比 べて,そんなに大きいわけではないからです.
私たちが,子供の頃に受ける判断は,1番目の種類の判断であることが多いので, 大人になってからも,自分について成される判断が,1番目の種類の判断であると 誤解しがちです.
ところが,世の中で私たちについて成される判断の多くは,2番目の種類の判断 です.2番目の判断であるにもかかわらず,1番目の判断であるかのように誤解 すると,自分のことを正確に判断していないとか,不当な判断を受けたといっ た個人的な反応を返しがちです.そもそも,2番目の判断は,あなた自身につい て正確に判断することが目的ではないので,判断の結果に対して個人的な反応 を返す必要はないのです.
1番目の判断だと思ってしまう,あるいは,そう思いたがることの裏側には,相 手は自分のことを正確に判断するために,ありとあらゆる努力をしてくれるは ずだといった甘い期待があったり,相手はすべてをお見通しだといった劣等感 があったりします.
2番目の判断を受けている場合には,そういった甘えや劣等感を乗り越えて,自 分をいかに売るか,アピールするかということに注力し,結果を個人的なもの として受け取らないというやり方が,成功する確率をあげます.
以上が,ポール・グレアムのエッセイの内容です.
そんなことは分かっているよ,と言うかもしれませんが,2番目の判断を受けて いるにもかかわらず,知らず知らずのうちに,1番目の判断であると誤解して, 最適な行動をとれなかったり,必要以上の落ち込み方をする場合は,よくある のではないでしょうか.
仕事やビジネスに関わる判断は,たいていの場合,2番目の判断です.仕事に限 らず,実生活における判断も,たいてい2番目の判断ではないのかな.
自分がいいものを生産すれば,売れるはずだとか,正確な情報を話しているの だから,伝わるはずとか,正しいことをしているのだから,受け入れられるは ずとか,相手の目的を理解しないままに,見当違いの思い込みで行動してしま い,結果としてうまくいかないということは,よくあることです.
さらには,うまくいかなかった結果を個人的に受け取って,不平を言うだけで, 何が間違っていたのかをよく理解しないまま,失敗を繰り返すなんてことも, よくあることです.最悪なのは,結果を個人的に受け取ることで,次のトライ を諦めてしまったり,自分で自分を否定したりすることです.
こういうことを理解しているのとそうでないのとでは,長い時間の中で,大き な違いをもたらします.若い人たちには,こういうことを分かった上で, 強く生きていってもらいたいものです.
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