- 2007-05-26 (Sat) 2:55
- 占星術
John Frawleyのレセプションの捉え方が,伝統的な占星術のレセプションとは 異なるものであるということを書いてきましたが,Robert Zollerも,著書の 「The Arabic Parts in Astrology: The Lost Key to Prediction 」の中で, ホロスコープを解読する際に,天王星,海王星,冥王星を現代的な解釈の下で 参照していますし,Lee Lehmanは,著書「The Martial Arts of Horary Astrology」の中で,パートナーを伝統的な7ハウスだけでなく,5ハウスにも当 てはめるということを試みているわけで,伝統占星術の権威と見なされている 人たちの仕事が,17世紀以前の伝占星術の伝統に徹頭徹尾沿っているなんてこ とは,なかなか言えることではありません.
もちろん,Zollerは,伝統の文脈の中で語っていたわけではないし,Lehmanも, 伝統から逸脱していることは分かった上で議論を展開しているわけで, Frawleyが,伝統的な技法の名の下に,それとは実際には異なる技法を示してい ることとは,質は違います.
しかし,いずれにせよ,この人の著書だけを読んでいけば,伝統占星術をよく 理解できて,安心なんてことは,まずありえません.
まず,伝統占星術といっても,不変で一貫した伝統が,いつの時代も変わらず に存在してきたとは,言いがたいです.占星術の歴史を振り返ると,古代ギリ シャ・ローマの占星術があって,その後,西ローマ帝国が滅び,ヘレニズムの 伝統が西ヨーロッパで潰えた後は,イスラム世界で占星術は発展し,その後, 12-13 世紀に西ヨーロッパに移植されたという過程の中で,様々な断絶,混乱, 付加などがあったはずです.
そういった長い歴史を通して,どのように占星術が変遷していったかについて, 正確に理解することは至難の技であり,整理されていないことや,よく理解さ れていないことは,まだだ多いです.そもそも,混乱や断絶があったわけなの で,首尾一貫した不変なものがあったことを前提として,議論を展開すること はできないのです.
したがって,伝統占星術の権威とみなされるような人でも,その人生の中で, 考えを変えていきますし,伝統占星術のコミュニティがもつ常識も,不変では なく,変わっていきます.
学問の領域では,自ら学んで,自分なりに考えていくとき,あるいは,もっと 進んだ人ならば,独自の仕事をなそうとするときは,権威や先人の考えや仕事 を尊重しつつ,それを疑うという,一見矛盾した態度が求められます.
占星術の実践家による占星術に対する取り組みが,現代的な意味で学問と言え るかというと,それは怪しいと思っていますが(科学史の対象として占星術を 捉える場合は,学問として成立するわけですが),少なくとも,占星術という 領域においても,ある信念体系(一つではありません)を共有するコミュニティ の中で,他者の考えを参照しながら自分の考えを形作っていったり,議論を通 して互いの考えに影響を与えるといったことは行うわけですから,やはり「権 威や先人の考えや仕事を尊重しつつ,それを疑う」という態度は価値あるもの です.それがないと,硬直化した,進展のない領域となってしまうからです.
日本の中で,占星術の伝統に専門的な関心をもつ人は少ないと思いますが, 「権威や先人の考えや仕事を尊重しつつ,それを疑う」ということを頭の隅に おきつつ,且つ,楽しみながら,やっていくとよいと思います.というか,自 分では,そういう感じでやっていきたいです.
私は,単なる素人で,能力から考えて,「占星術の伝統をよく分かった人」に はなれそうもないですが,今より年齢を重ねていったときには,自分より若い 人たちから色々と教えてもらうという状況を楽しみにしています.自分が「よ く分かった人」になるよりも,そちらの状況の方が楽しそうだし,占星術の伝 統のバトンが次の世代に渡されていったということを実感できるんじゃないか と思うので.
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