前回のエントリ「Joseph Craneのヘレニズム占星術紹介」 に引き続き、Joseph CraneがMountain Astrologer April/May 2008に寄稿してい るヘレニズム占星術の紹介記事を材料に、他の伝統占星術の文献も参照しなが ら、ヘレニズム占星術、および、伝統的な占星術について書いていきます。
- Joseph Crane: A Practical Introduction to Hellenistic Astrology, The Mountain Astrologer, Issue 138, April/May 2008, pp.65–73 (2008).
ヘレニズム占星術では、天体のあいだのアスペクトを考慮する前に、まず天体 の状態について検討します。これは、ヘレニズム占星術だけのことではなく、 中世期・ルネッサンス期の占星術でも同様で、17世紀以前の伝統的な占星術の 特徴といえます。
伝統的な占星術は、天体の状態を評価するための様々な方法を備えていますが、 Joseph Craneの記事では、ヘレニズム占星術において使われた方法として、セ クト、オリエンタル/オキシデンタル、ディグニティが取り上げられています。
このうち、セクトについて見てみます。セクト(Planetary Sect)という考え方 は、現代の占星術にとってはあまり馴染みがないかもしれませんが、ヘレニズ ム占星術においては重要視された考え方です。
セクトについては、Joseph Craneの記事でも簡単に紹介されていますが、 Robert Handによる次の著作が分かりやすくてお薦めです。
- Robert Hand: Night and Day - Planetary Sect in Astrology, ARHAT (1995).
セクト(sect)という言葉は、Robert Handによると、division(区分)を表します。 cut(切断する) あるいは divide(分割する)を意味するラテン語のsecoに由来 する言葉だそうです(Night and Day, p.2)。
伝統的な占星術において、セクトとは、昼のセクト(区分)と夜のセクト(区 分)を指し、天体を昼のセクトに属する天体と、夜のセクトに属する 天体に分け、それぞれを昼の天体、夜の天体と呼びます。
昼の天体は、土星、木星、太陽です。夜の天体は、火星、金星、月です。
水星は、Joseph Craneの記事の中では、直接的に定義されていませんが、太陽 より先に東の地平線を昇るときは、昼のセクトに属し、太陽より後に東の地平 線を昇るときは、夜のセクトに属し、夜生れのホロスコープで質が向上します。 モーニング・スターとしての水星は昼の天体であり、イブニング・スターとし ての水星は夜の天体という言い方もできます(Night and Day, p.4)。
次に、出生を昼生まれと、夜生れに分けます。出生ホロスコープで、太陽が地 平線より上にあれば昼生まれ、地平線より下にあれば夜生れです。
このとき、昼生まれのホロスコープでは、昼の天体の質が向上します。一方、 夜生れのホロスコープでは、夜の天体の質が向上します。「質」というのは、 分かりづらい表現ですが、ざっくばらんに言えば、昼の天体は、昼の方がは調 子がよく、夜の天体は、夜の方が調子がいいと考えてください。人間でも、昼 の方が調子のいい人と、夜のほうが調子のいい人がいますよね。それと同じよ うなもんです。
さらに、昼の天体である土星と木星は、地平線を境にして、太陽と同じ側にあ り、且つ、昼のサイン(男性サインと同じ; 火と風のサインのこと)にあると き、質が向上します。夜の天体である火星、金星、月は、地平線を境にして、 太陽と逆の側にあり、且つ、夜のサイン(女性サインと同じ; 地と水のサイン のこと)にあるとき、質が向上します。
このように、セクトは、
(1) 出生が昼生まれか夜生れか
(2) 天体が、地平線を境にして太陽と同じ側にあるか、逆の側にあるか
(3) 天体が、昼のサインにあるか、夜のサインにあるか
という3つの条件を考慮に入れますが、Robert Hand は、ヘレニズム占星術で もっとも重要だと考えられたのは、(1)の昼生まれか夜生れかという条件で あると述べています。Robert Handは、ギリシャ語の文献の多くは(1)の条件 しか言及していないことから、そう推察しています。続いて、2番目に重要なの が、(2)の地平線を境にした太陽との位置関係であり、最後に、(3)のサ インの昼/夜の別を考慮したそうです (Night and Day, p.6)。
ルディー・ジュリアーニ の出生ホロスコープで、天体のセクトをみてみましょう。
ルディー・ジュリアーニの出生ホロスコープ

ジュリアーニの出生ホロスコープでは、太陽は地平線より上にありますから、 昼生まれです。したがって、土星、木星、太陽の質は向上します。
さらに、土星と木星は、地平線を境にして太陽と同じ側にあり、且つ、昼のサ インにありますから、セクトの観点からは、非常に質がよい状態にあると言え ます。
水星は、太陽より先に東の地平線を登っているので、昼のセクトに属します。 太陽と同じ側にありますが、夜のサインにあります。
火星は、夜のセクトに属する天体です。ジュリアーニは昼生まれであり、火星 は地平線を境に太陽と同じ側にあり、昼のサインにありますから、セクトの観 点からは火星の状態はよくないといえます。
金星も夜のセクトに属する天体です。夜のサインにありますが、セクトの観点 からは良い状態とはいえません。もちろん、ディグニティの観点からは、牡牛 という自分のサインにありますから、質の良い金星なわけですが。
さて、Joseph Craneの記事では、ジュリアーニの出生ホロスコープで、最初に、 土星に注目しています。この出生ホロスコープでは、太陽が10ハウスにあり、 目を引きますが、それを支えているのは土星であると述べています。
10ハウスの太陽は、リーダーを表すわけですが、土星は、先にみたように、セ クトの観点からは良い状態であり、双子という風のサインにありますから、ト リプリシティのディグニティをもちます。しかも10ハウスという強いハウスに あります。
太陽も双子にありますから、土星は太陽をトリプリシティによりディスポーズ している状態であり、そういう意味で、太陽のリーダーシップは、この土星が 表す「良い質」の厳格さに支えられているわけです。
Joseph Craneは、この土星が表すエピソードとして、ジュリアーニが、ニュー ヨーク市長になる前は、検事としてマフィアの一掃作戦や、ウォール・ストリー トの大物をインサイダー取引で告発したことを引き合いに出しています。 しかし、10ハウスの太陽、土星には、火星がアスペクトをもっており(ヘレニ ズム占星術ではアスペクトは、天体のオーブは考えず、サインのあいだの関係 でみます)、やり過ぎ(overkill)の傾向もみられると付け加えています。
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