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Joseph Craneのヘレニズム占星術紹介 (3)

Joseph CraneがMountain Astrologer April/May 2008に寄稿した記事を材料に、 ヘレニズム占星術、および、伝統的な占星術について書いてきましたが、今回 はその第3回目です。これで最後です。

  • Joseph Crane: A Practical Introduction to Hellenistic Astrology, The Mountain Astrologer, Issue 138, April/May 2008, pp.65–73 (2008).

これまでのエントリです。

今回のエントリは、ヘレニズム占星術におけるアスペクトについてです。

Joseph Craneは、記事の中で、ヘレニズム占星術のアスペクトについて、主に 3つのことを書いています。

第一に、Joseph Craneのヘレニズム占星術紹介 で書いたように、ヘレニズム占星術では、アスペクトを、天体が存在するサイ ン間の関係として捉え、天体のオーブは考えません。

たとえば、以下に示すジュリアーニの出生ホロスコープでは、獅子の火星、 木星、月は、双子の太陽、土星とセクスタイルのアスペクトをとり、牡牛の水 星、金星とはスクエアのアスペクトをとることになります。

ルディー・ジュリアーニ の出生ホロスコープを例にとります。

ルディー・ジュリアーニの出生ホロスコープ
Rudy Giuliani Natal Horoscope by Whole Sign House

第二に、ヘレニズム占星術では、アスペクトのタイプよりもアスペクトしてい る天体の性質の方がより重要です。たとえば、木星からのスクエアは、良好な 影響をもたらしうるが、土星からのセクスタイルは、困難な影響をもたらす可 能性があります。スクエアだから困難をもたらすとか、セクスタイルだから良 好な影響をもたらすといったように、一足飛びに考えるのではなく、まずはア スペクトに関与している天体の性質を考えなさい、ということです。

このことは、ヘレニズム占星術だけでなく、伝統的な占星術全般に言えること です。ただし、天体の性質というのは、木星だから良くて、土星だから悪いと いった単純なことではなくて、天体のエセンシャル/アクシデンタルなディグ ニティや、レセプションの有無に基づいて検討する必要があるわけです。

第三は、アスペクトには向きがあるということです。アスペクトに向きがある という考え方は、伝統的な占星術ではよく知られていることですが、現代的な 占星術に親しんだ方にとっては、馴染みがないかもしれません。Joseph Crane は、アスペクトの向きに関わる基本概念として、「前方 に/を 見る(look ahead)」、「(後方に)光を投げ返す(cast rays back to)」、「支配的な天体 (predominating planet)」という3つの用語について説明しています。しかし、 残念ながら、Joseph Craneが与えている「前方/後方」の説明は混乱している ように見受けました。

そこで、Deborah Houldingの以下の記事を参考にして、アスペクトの向きに関 わる概念を整理しておこうと思います。

まずは、アスペクトにおける前方/後方という概念についてです。ヘレニズム 占星術では、アスペクトをとるサイン同士は、互いを見ることができると考え ました。さらに、サインが互いを見るときに、前方に視線を向けて相手を見て いるのはどちらで、後方に視線を向けて相手を振り返っているのはいずれかと いう区別を行いました。

前方/後方の区別は、ダイアーナル・モーション(diurnal motion)と呼ばれる 天空の動きに基づいて決められます。ダイアーナル・モーションとは、一日の 間に天体やサインが東の地平線から昇って、西の地平線に沈んでいくという反 時計回りの動きを言います。ダイアーナル・モーションは、デイリー・モーショ ン(daily motion)、プライマリー・モーション(primary motion)とも呼ばれま す。ダイアーナル・モーションは、天体がサインの中を進んでいく動き(セカ ンダリー・モーション、secondary motion)よりも、より基本的な天空の動きと 考えられてきました。

サインが東の地平線から上るとき、このダイアーナル・モーションに基づいて、 先に上っているサインを前方に見ながら上ってくると考えます。サインに顔が あるとするなら、顔を後ろに向けて、後ずさりしながら東の地平線を上ってく るのではなく、顔を前に向けて、前進しながら上ってくると考えるわけです。

前方/後方は、右/左の概念とも結びつけられています。或るサインから見て、 先に東の地平線から上ったサインが右側にあると考え、後から上ってくるサイ ンが左側にあると考えます。

たとえば、牡羊が東の地平線を上るとき、牡羊は、先に上った水瓶や山羊を前 方に見ながら上っていると考えます。すなわち、牡羊にとって、前方とは、水 瓶や山羊がある向きであり、後方とは、双子や蟹がある向きとなります。言葉 を換えれば、牡羊は前方に水瓶や山羊を見て、後方に双子や蟹を振り返って見 るとも言えます。右/左で言うと、牡羊から見て、水瓶や山羊は右側にあり、 双子や蟹は左側にあると考えます。

アスペクトを絡めて言うならば、牡羊は、セクスタイルのアスペクトによって 前方に水瓶を見て、スクエアのアスペクトにより前方に山羊を見ます。牡羊は、 セクスタイルのアスペクトによって後方に双子を見て、スクエアのアスペクト によって後方に蟹を見ます。

ここで、牡羊の両隣にある魚や牡牛は、牡羊とはアスペクトをもちませんから、 そもそも牡羊からは見えないことに注意してください。

この前方/後方の考えに基づくアスペクトの向きの区別が、デクスター (dexter)/シニスター(sinister)のアスペクトの区別です。デクスター・アス ペクトとは、速い天体が前方にある遅い天体に対してアスペクトを投げかける ときを言います。デクスターとは「右にある」という意味ですが、デクスター・ アスペクトとは、速い天体が、右側にある遅い天体に対してアスペクトを投げ るときを言うわけです。

これに対して、シニスター・アスペクトとは、速い天体が後方にある遅い天体 に対してアスペクトを投げかけるときを言います。シニスターは「左にある」 という意味ですが、シニスター・アスペクトとは、速い天体が、左側にある遅 い天体に対してアスペクトを投げるときを言うわけです。

たとえば、月が牡羊にあり、木星が水瓶にあるなら、月は木星に対しデクスター のセクスタイル・アスペクトを投げかけます。月から見て、木星は前方、ある いは、右側にあります。月が牡羊にあり、木星が双子にあるときは、月は木星 に対しシニスターのセクスタイルアスペクトを投げかけることになります。こ のときは、月から見て、木星は後方、あるいは、左側にあります。

デクスター・アスペクトは、ダイアーナル・モーションの向きに沿っっアスペ クトであるため、シニスター・アスペクトよりも、より強く、より好ましい影 響を与えるものと考えられました。

Joseph Craneの記事では、この前方/後方の区別が、どういうわけか、以上に 説明したものとは逆になっています。ここでは、より標準的と考えられる定義 に基づいて、前方/後方の区別をまとめました。

次に、前方/後方の考え方と関連して、「支配的な天体(dominating planet)」 という考え方について説明します。Joseph Craneの記事では、predominating という用語を用いていますが、Deborah Houldingの次の記事における dominating と同じ意味です。

2つの天体がアスペクトをもつとき、アスペクトの右側にある天体(言い換え れば、ダイアーナル・モーションにしたがって、より進んだ位置にある天体) は、支配的であると呼ばれ、アスペクトの左側にある天体に対して支配力を振 るったり、その力を抑え込んだりします。

Deborah Houldingの記事には、ベネフィックな天体がマレフィックな天体を支 配することが好ましいと述べられています。ベネフィックな天体が、マレフィッ クな天体の破壊的な力を抑え込むことができるからです。また、Joseph Crane の記事では、この支配関係は、スクエアのアスペクトにおいてより顕著に見ら れると述べられています。

ジュリアーニの出生ホロスコープを例にとりましょう。牡牛にある金星や水星 は、獅子にある火星、木星、月を支配しています。また、双子にある太陽や土 星も、獅子にある火星、木星、月を支配しています。

Joseph Craneによると、12ハウス獅子火星は、うまくコントロールできないと、 怒りや衝動にとらわれやすくなりますが、ジュリアーニの出生ホロスコープの 場合、火星は、水星や金星に支配されているため、金星の「より良い印象を周 囲に与えようとする願望」や水星の「計算高さ」が優って、火星の「怒り」や 「衝動」が抑制されているのだとしています。

また、10ハウスの太陽や土星が、12ハウスの火星、月、木星を支配しているこ とは、ジュリアーニは、政治的な闘争に明らかに興奮しやすかったり、テロリ ストやニューヨークの犯罪といった、逆境に直面したときに最善を尽くすとい う傾向を確かにもっているけれども、通常は、有能で抑制が利いたパブリック イメージを打ち出しているというところに現われていると述べています。

Joseph Craneの記事は、ヘレニズム占星術における予測技法についても触れて います。ご興味のある方は、彼のMountain Astrologerの記事をご参照くださ い。

また、「支配的な天体」を使ったホロスコープ解読例が、Deborah Houldingの記事 「The Classical Origin and Traditional Use of Aspects by Deborah Houlding」の最後の方に掲載されています。これも面白いので、関心のある方は、お読みになるとよいと思います。

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