- 2008-04-14 (Mon) 2:12
- 社会
映画「靖国 YASUKUNI」(李纓監督)は、映画が伝えようとするメッセージや、 映画を見る者が受け取るメッセージがどんなものであれ、上映されるべきでしょ う。文化庁所管の日本芸術文化振興会が行った公的助成の適切性に関して議論 されるのは当然ですが、それと上映するしないは別問題です。表現の自由が保 証されたこの国においては、どんな政治的なメッセージをもつ作品であろうと、 製作・上映することは自由です。
しかし、作品に登場する刀匠の刈谷直治さんが、有村治子参院議員やメディア の取材に対して、自分の映像を削除するように求めているという報道に接して、 製作者側が刈谷さんの同意を得るまで、作品を上映することには問題があると 考えるようになりました。表現の自由を訴える製作者側が、出演者の権利を守 るために積極的に動かないのは、恥ずかしい限りです。
- 映画「靖国」:出演の刀匠「カットして」 政治的と批判--監督「了承得た」 - 毎日jp(毎日新聞)
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李纓監督は、「刀匠(刈谷氏)は納得してくれていた。変心した理由がわから ない」と語っていますが、有村治子参院議員の話だけでなく、各新聞社の取材 の裏付けもあるので、現時点において、刈谷氏が、撮影を受けた趣旨と違うと して、出演場面と名前の削除を求めているのは事実でしょう。
asahi.com:「靖国」刀匠 議員「本人が削除希望」監督「なぜ変心」 - 社会
10日、朝日新聞の取材に応じた刀匠(90)とその妻(83)によると、05年に李監督側から出演依頼の手紙が届いた。戦後、伝承されなくなった靖国刀の最後の刀匠として取り上げたいとの内容だった。刀匠は承諾し、李監督は靖国刀を制作している場面などを撮影した。
その後、李監督らが自宅に来て映像を見せたが、靖国神社に参拝する小泉首相(当時)とそれに反対する人たちに交じって刀を作る映像が流れていたため、「撮影を受けた趣旨と違う」と出演場面と名前の削除を頼んだという。
3月末と今月9日に、有村議員から「国会で映画を審議しているからどう考えているのか意見を聞きたい」という内容の電話を受けた。刀匠は「出演は本意ではない。名前と映像を省いてほしいし、完成品を見たいと思っている」と伝えたという。
刀匠は「靖国刀の伝統技術や価値を後世に伝えてくれるものと思っていた。『靖国問題』と結びつけるとは思っていなかった。違う趣旨で映画が作られ、『靖国問題』に巻き込まれた」と話した。
こういった問題が持ち上がっているにもかかわらず、李纓監督が、政治家の圧 力によって刈谷氏が変心したと主張するのは、的外れに見えます。彼は、政治 的に圧力をかけられている者として自身を位置づけて、発言しているわけです が、この刈谷氏の件に関して、今彼が行うべきことは、刈谷氏と向き合い、説 明をし、映像の使用許可を得るために交渉をすることです。圧力にせいにする ことは、それから逃げているものと考えざるをえません。ドキュメンタリー映 像の製作者として、やってはならないことです。
有村参院議員が出演者に接触すること自体を不適切と捉える向きがあるようで すが、筋違いの批判です。希望に反して、自分の名前と映像を作品に使われた と言う人物がいたときに、事実確認のため本人にコンタクトをとることは自然 な行為ではないでしょうか。
これと同様の出来事として、文化庁所管の日本芸術文化振興会がこの作品に対 して行った公的助成の適切性をめぐって、稲田朋美衆院議員と「伝統と創造の 会」が試写会を要請したことについても、政治家の不当な介入であるとの批判 がありましたが、的外れの批判であったと思います。
日本芸術文化振興会は(1)政治的、宗教的宣伝意図がない(2)日本映画で あることを助成条件にしており、公的助成金拠出の適切性を判断するためには、 映画内容を見る必要があるわけなので、稲田議員らが試写会を要請したことは、 権力の不当な介入とは言えないでしょう。税金の使い方の適切性を議員がチェッ クすることは自然な行動であると考えます。
もちろん、助成金拠出の適切性と、この映画を上映するかどうかは別問題です。 実際、稲田議員自身も、文化庁所管の日本芸術文化振興会が公的助成を行った という、その一点に関して問題にしているのであって、いかなる政治的・宗教 的な宣伝意図のある映画を製作しようと公開しようと自由であると述べていま す。
【正論】文化庁の映画助成 衆議院議員、弁護士・稲田朋美 - MSN産経ニュース
表現・言論の自由が保障されたわが国において、たとえ政治的、宗教的な宣伝意図のある映画を製作しようと公開しようと自由である。今回、映画『靖国 YASUKUNI』(李纓監督)の一部映画館での上映中止をめぐって私が批判の矢面に立たされている。私たちが問題にしたのは、この映画自体ではない。そこに文化庁所管の日本芸術文化振興会が750万円の公的助成をしたこと、その一点についてである。
現在のところ、「靖国」の製作者側は、刈谷氏に対して、名前と映像を使用す る同意が得られるように、積極的にコンタクトをとって、説明しようという意 思は示していません。自らの表現の自由は守るけれども、出演者の権利のため に行動を起こさないのは、矛盾を感じます。
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