- 2008-09-15 (Mon) 18:12
- 統計
うお座効果に関するこれまでのエントリーは以下の通りです。
- うお座効果は本当に存在するのか (1)
- うお座効果は本当に存在するのか (2)
- うお座効果は本当に存在するのか (3)
- うお座効果は本当に存在するのか (4)
- うお座効果は本当に存在するのか (5)
- うお座効果は本当に存在するのか (6)
- うお座効果は本当に存在するのか (7)
- うお座効果は本当に存在するのか (8)
随分と長々と書いてきました。面白そうなことはまだありますが、きりがないので、このあたりで 「うお座効果」のシリーズを終えたいと思います。
これまで書いてきたことで、ケネス・ミッチェル氏が主張する「うお座効果」なるものをオリンピックメダリストの誕生日のデータから実証することはできないということはお分かりいただけたと思います。
最後にまとめておきます。
ケネス・ミッチェル氏が、1896年以降のオリンピックのメダリストの誕生日を調査した結果として、自身のサイトThe Pisces Effectで述べている主な主張は次の2つです。
(1) メダリストは、やぎ座、みずがめ座、おひつじ座生まれが多い、生まれ月で言うと、12月終わりから4月終わりの生まれが多い。
(2) 水泳や水球といった水に関係の深い種目のメダリストは、それ以外の競技のメダリストと比べて、うお座生まれが多い(「うお座効果」)。
(1)に関しては、「うお座効果は本当に存在するのか (3)」に示したように、すべての国、すべての競技のメダリストを寄せ集めた分布をみれば、1月から3月の生まれが多いとか、やぎ座、みずがめ座、おひつじ座生まれが多いといった傾向が現れることは事実です。しかし、「うお座効果は本当に存在するのか (4)」に示したように、メダリストの生まれ月/生まれ星座の分布は国よってかなり異なります。ミッチェル氏の言うような、やぎ、みずがめ、おひつじの生まれが多いという傾向は、すべての国に見られるわけではなく、実際、最も多くのメダリストを輩出している米国にはそのような傾向はありません。国ごとに大きく異なる特徴をもつ生まれ月/生まれ星座の分布を寄せ集めた結果合成される分布をもって、なんらかの統計的な傾向を主張しても、大きな意味はありません。
スポーツ選手の生まれ月の分布に偏りがあることはよく知られていることなので、スポーツ選手の生まれ星座の分布に偏りがあっても不思議なことではないのですが、その偏りは国によっても、年代によっても、競技によっても異なります。すべての国、すべての年代、すべての競技のメダリストの分布を一くくりに扱って、メダリストにはおひつじ座/みずがめ座/やぎ座生まれが多いといった統計現象を導くことには、そもそも無理があるのです。
(2)に関しては、「うお座効果は本当に存在するのか (7)」、「うお座効果は本当に存在するのか (8)」で示したように、水泳、水球それぞれのメダリストの生まれ月/生まれ星座分布は、全競技メダリストの分布に対して有意な偏りはもたず、オリンピックメダリストの誕生日のデータから「うお座効果」なるものを実証することはできません。
水泳や水球のメダリストはうお座が多いといったことを数字で示されると、人は信じてしまいがちですが、多量のデータの統計的な特徴を人間の直観で把握することはそもそも困難なことであり、特定の統計現象の存在を主張するためには、注意深くデータを取り扱い、適切な統計検定や統計分析の手法を適用することによって、客観的な証拠を示す必要があります。私は統計分析の専門家ではありませんが、ケネス・ミッチェル氏が自身のサイトThe Pisces Effectで書いている内容は、一見して、統計現象の実証に足る十分な証拠を示していないと分かるものです。
これまでのエントリの中で使った統計検定の方法は、初歩的なものであり、統計を理解している人なら誰もが知っているような方法です。なので、目新しい統計現象の存在を主張している人がいて、これまでのエントリで説明してきた程度の統計検定の結果すら示していないのであれば、その人の主張は疑ってかかるのが賢明です。そういう人に対しては、統計検定の結果を示してくださいとか、知り合いに分析してもらいますから、あなたが使ったデータをすべて示してください、と言ってあげてください。
- Newer: ブログを一本化します
- Older: うお座効果は本当に存在するのか (8)
Comments:2
- SADAMU 08-09-16 (Tue) 14:10
-
長いエントリー、お疲れ様でした。とても楽しく読ませて頂きました。
注意深いデータの取り扱い方などは、今後、他の事柄に関しても、 何かを考えたり取り扱ったりするのに参考になります。
統計や検定に詳しくない者からすると、 複数の異なる特徴を持つ分布を一くくりにして分析すると、 合成された結果が出てくる可能性がある、
というのは、目から鱗だったりします。
- Kensuke Hoshitani 08-09-16 (Tue) 22:04
-
SADAMUさん、こんばんは。
異なる出身国のデータとか、異なる競技のデータとか、素性の異なるデータを混ぜると、たまたま有意な結果が出てしまうことがあるので、どういうデータを使って検定しているのかとか、有意な結果の意味をよく考える必要があります。
スポーツ選手の生まれ月分布は国によって異なるので、異なる国の選手のデータを混ぜて使うことに、そもそも無理があるのだと思います。
Trackbacks:0
- Trackback URL for this entry
- http://www.hoshitani.com/festinalente/2008/09/15/is-pisces-effect-real-9/trackback/
- Listed below are links to weblogs that reference
- うお座効果は本当に存在するのか (9) from Festina lente



