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レセプション Archive

William Lilly’s Aged Man Chart

これまでのエントリで,伝統占星術におけるレセプションがどういうもの であり,Frawleyのレセプションの捉え方は,William Lillyも含めて伝統的な 技法とは異なるものである,ということを書いてきましたが,このエントリで 一段落させたいと思います.

これまで書いてきたことは, Deborah HouldingのSkyscriptフォーラム で議論されたことをまとめたものです.

フォーラムでの議論では,FrawleyとLillyのレセプションの技法を比較するた めに,Lillyによって提示された一枚のホラリー・チャートを例にとっていまし た.Frawleyが,自身のアーティクルの中で,彼の流儀に沿って,そのチャート を読んでおり,それがLillyの読み方との良い対比となっているためです.非常 に参考になるので,以下において,フォーラムでの議論を参考に,Frawleyと Lillyの読み方を対比させます.

William Lillyが示したホラリー・チャートとは次のものです.

“A Gentlewoman desired to know if she should have an aged man; yea or no” from William Lilly, England’s Prophetical Merlin, p.133.

質問者は女性で,相手は年をとった男性です.相手の男性は質問者の女性と結 婚したがっていて,質問者の女性はそれを受け入れようかどうかを尋ねている ホラリーです.

Lillyによるリーディングの全貌は,Deborah Houldingが自身のサイトに再掲 してくれていますので,そちらをご覧ください:Skyscript: Aged man?

このホラリー・チャートに関するFrawleyの解読は,「The Astrologer’s Apprentice, Issue 20, pp.10-14」を参照してください.

Lillyは,質問者の女性の表示体として1ハウス(乙女)のルーラーである水星 をとりあげ,相手の男性の表示体として7ハウス(魚)のルーラーである木星を とりあげます.Lillyは,質問者の表示体として月を使うことを陽に宣言してい ませんが,実際には月も質問者の表示体として使います.Lillyは,当たり前の ことなので,陽には宣言していないだけです.

Lillyは,次の2つのことから,質問者の女性は,最近,相手の男性と婚約 (treaty)を交わしたと判断しています.

  • 水星が木星とのセクスタイルから離れつつある
  • 月が木星とのスクエアから離れつつある

これは,アスペクトがいったんは成立したけれども,それから離れつつあるの で,過去の出来事と読んでいるわけです.

さらに,次の2つのことから,相手の男性はそのことを懇願した,切望した (importune)と判断しています.

  • 木星が水星をエザルテーションでレシーブしている
  • 木星がアセンダントとトラインである

水星は,木星がエザルテーションとなるサインにあって,且つ,木星と水星は, (離れつつあるけれども)セクスタイルのアスペクトをもっていました.した がって,木星(相手の男性)が水星(質問者の女性)をレシーブしているとい うレセプションが成立していることが分かります.このことから,木星(男性) は,水星(質問者の女性)の関心や好意を受け入れたと読むわけです.これは 伝統的な占星術におけるレセプションの捉え方と合致しています.質問者の女 性はホラリーを依頼しているぐらいですから,相手の男性に関心があったのは 当然でしょう.木星が水星をレシーブしていることから,それを質問者の男性 は喜んで受け入れたということが読みとれるわけです.

木星がアセンダントとトラインであることは,Deborah Houldingによると,相 手の男性が質問者の女性の見た目に惹かれたことを示しているということです.

Lillyが読んだことをそのまま理解すると,上のようになるのですが,この Lillyの読み方に関して,Frawleyは,誤解を生む(misleading)読み方であると 書いています(The Astrologer’s Apprentice, Issue 20, pp.10-14).

どういうことかと言うと,Frawleyは,彼の流儀のレセプションの考え方に基づ いて,水星が,木星がエグザルテーションとなる場所にあるのだから,水星が 木星をエグザルトする(恋焦がれる)という読み方になるのであればよいが, Lilly の書いているのは,その逆なので,誤解を生むと主張しているのです.

確かに,Lillyのこの部分のレセプションの使い方が,Frawleyのレセプション の使い方と矛盾することは確かです.しかし,Lillyのレセプションの使い方は, 占星術の伝統と合致するものであり,むしろ,Frawleyのレセプション技法が, 伝統とは異なるものなのです.自分の読み方とは違うから,Lillyのリーディン グが誤解を生むものと判断するのは,我田引水と言わざるをえません.

Lillyのリーディングに話を戻します.水星と月の次のアスペクトを見てみると, 水星は火星とスクエアのアスペクトをとり,月は火星とセクスタイルのアスペ クトをとります.このことから,Lillyは,質問者の女性は,相手の男性(木星) から,別の男性(火星)に関心や愛情を移したと読んでいます.水星は火星と 同じ度数でスクエアですから,ホラリーの時点では,女性の関心は別の男性 (火星)に移っていると考えたわけです.これは,速度の速い天体が状況を変 えていくということと,その速度の速い天体がどういったアスペクトを順に形 成していくか,ということから導き出されるリーディングです.ここまではレ セプションとは関係ありません.

さらに,Lillyは,次の理由で,質問者の女性の別の男性(火星)に対する関心 は,実を結ばないと判断しています.

  • 火星も月も不運なハウスにある(火星は8ハウス,月は6ハウス)
  • 水星も月も,火星が位置する場所でディグニティをもたない

水星(質問者の女性)と火星(別の男性)はスクエアですが,スクエアは困難 なアスペクトであること,火星は本来破壊的な天体であること,火星は8ハウス という不運なハウスにあることから考えて,このアスペクトは事を成就させる とは言えません.月(質問者の女性)と火星(別の男性)はセクスタイルです が,火星が本来破壊的な天体であり,両天体とも不運なハウスにあるという困 難さをセクスタイルではくつがえすことはできません.

もし,水星と火星のスクエア,月と火星のセクスタイルに,メジャーなディグ ニティ(サインルーラーやエグザルテーション)による強力なレセプションが 介在していれば,こういった困難さをくつがえすことはできるのでしょうが, そういったレセプションはありません.

水星や月が,火星が位置する場所でディグニティをもてば,レセプションが成 立するので,別の男性(火星)も質問者の女性(水星や月)に関心をもち,女 性もそれを受け入れて,事が成就するという読み方になると考えます.

Lillyは,質問者の女性が別の男性に好意を移したことは,アスペクトから既に 導き出しているので,そのことに加えて,もし水星や月が,火星が位置する場 所でディグニティをもてば,別の男性が質問者の女性に対して愛情をもち,そ れを女性が受け入れると読めるというだけのことなので,Lillyの書いているこ とは,伝統的なレセプションに沿ったものと捉えても,矛盾は生じません.

Frawleyは,Lillyが,火星(別の男性)が位置する場所で,水星や月(質問者 の女性)がディグニティをもつかどうかということから,別の男性が女性に関 心があるかどうかの判断を導いていることから,リーディングの最初にあった, 水星(質問者の女性)が位置する場所で,木星(相手の男性)がディグニティ をもつのにもかかわらず,逆に,相手の男性が質問者の女性との結婚を切望し たと読んだのと矛盾していると書いています(p.13).しかし,上に書いたよう に,Lillyが伝統的なレセプションの考え方に沿って読んでいると考えて, Lillyのリーディングに矛盾が生じることはないのです.

あと,Lillyは書いていないですが,水星や月が,火星がディグニティをもつ場 所にあれば,質問者の女性の愛情を別の男性が受け入れて,事が成就するとう いう読み方になると考えます.Lillyは,月が質問者の表示体になることをいち いち書かずに,そのことを前提としてチャートを読むということを普通にやっ ていますから,書いていないこと自体は別に不思議ではありません.このこと は,Lillyが陽に書いているにもかかわらず,それは誤解を生むから,無視しよ うというFrawleyの態度とは異なります.

もう一つ補足すると,Deborah Houldingによると,「天体Aが,自分が位置する 場所を支配する天体Bを愛する」というFrawleyの構図が,信頼度高く成立する のは,その天体が自身が支配するサインにあるときだけだと書いています.そ の場合,天体がアクシデンタルにどの位置にあるかに応じて,自尊心か自己愛を表すとい うことです(参照:Deborah HouldingによるThu Sep 22, 2005 5:35 のポスト). (これは,12ハウスなどにあれば,悪い意味での自己愛,アングルなどの強い場所にあれば,良い意味での自尊心を表すといったことを言っているのだと考えます.) このLillyのチャートの場合,火星(別の男性)は,自分が支配す るサイン(牡羊)にありますから,別の男性は,自分自身に関心があり,この ことも,質問者の女性の別の男性に対する愛情は成就しないことを示している と言えそうです.いずれにせよ,それは,レセプションとは無関係な議論です.

長々と書きましたが,John Frawleyが,現代を代表する伝統占星術の実践家で あること,彼の著作物が宝の山であることに,変わりはありません.ただ,彼 がレセプションと呼んでいるものは,伝統的にはレセプションと呼ぶべきで はなく,それこそ誤解を生んだり,本来のレセプションの技法を正しく理解す ることを妨げているということは指摘しておきたいと思います.

John Frawleyが言うところのレセプション

これまでのエントリで伝統占星術におけるレセプションについて書いてきました.

John Frawleyは,現代における伝統占星術の 主唱者の一人であり,彼の書いたReal Astrology, Real Astrology Appliedは, 伝統占星術の真髄を伝えることに成功している本であると思います.

しかし,レセプションに関わる議論で触れたように, John Frawleyが言うところのレセプションは,William Lillyが用いたレセプショ ンとも,伝統占星術の他の占星家が用いてきたレセプションとも異なるもので あり,Frawleyのレセプションの技法は,伝統占星術におけるレセプションの技 法とは言えないということが,Deborah Houldingなどによって, Skyscriptのフォーラム の上で議論されています.

John Frawleyは,レセプションの成立条件を「天体Bがエセンシャルなディグニ ティをもつ場所に天体Aが位置するとき,天体Aは天体Bにレシーブされる,ある いは,天体Bは天体Aをレシーブする」と定義しています.強調すべきは, Frawleyのレセプションでは,天体Aと天体Bの間にアスペクトがあることは要請 されないということです.

さらに,Frawleyは,レセプションの機能に関して,天体Aが天体Bにレシーブさ れるとき,「天体Aは天体Bを好む/愛する」,「天体Aは天体Bのコントロール 下にある」といった意味づけをもたらすものとして捉えています.この意味づ けは,天体Aが位置する場所において天体Bがもつディグニティの種類によって 異なります.サイン・ルーラーの場合は「AはBを愛する」,エグザルテーショ ンの場合は,「AはBに夢中になっている」といった具合です[John Frawley, The Horary Textbook, pp.71-75].

Frawleyのレセプションの説明は確かに分かりやすいのですが,伝統占星術にお けるレセプションの考え方とは異なるものです.これまでのエントリで説明し てきた通り,レセプションが成立するためには,アスペクトが必要であり,ア スペクトがあるからこそ,レセプションに固有の機能が効いてくるわけですが, Frawleyのレセプションではアスペクトを要求していません.Frawleyが言うと ころのレセプションは,伝統占星術におけるレセプションではなく,むしろディ スポーズ(dispose),ディスポジター(dispositor)という概念として捉えるの が自然です.

天体Aが天体Bによってディスポーズされるとは,天体Bがエセンシャルなディグ ニティをもつ場所に天体Aが位置することを言います.このとき,天体Bは天体 Aのディスポジターと呼ばれます.エセンシャルなディグニティはどんなもので も構いません.サイン・ルーラー(エグザルテーション・ルーラー,トリプリ シティ・ルーラー,…)によってディスポーズされるなどと言います.また, アスペクトは必要としません. このように,ディポーズという概念は,Frawleyのレシーブと同じものであることが分かります.

天体Aが天体Bにディスポーズされるとき,すなわち,天体Aが,天体Bが何らか のエセンシャル・ディグニティによって支配する場所に位置するということは, 天体Aが何らかの関心を天体Bに対して向けているということは言えるかもしれ ません.ただし,Frawleyの言うように,エセンシャル・ディグニティの種類に 応じて,愛する,夢中になるといった意味が導かれるかどうかは,議論の余地 があるでしょうが.

いずれにせよ,天体Aが天体Bに対して何らかの関心を向けているといった意味 が導かれるにしても,そのことは,単に,天体Aが天体Bにディスポーズされて いるということに由来するものです.レセプションが成立するためには, 加えて,天体Aと天体Bがアスペクトすることが必要であり,アスペクトが成立 してはじめて,天体Bが,天体Aの関心を受け入れ,天体Aに力を与えるという, レセプション固有の意味が導かれます.また,天体Aと天体Bが互いに敵意をも つような関係であっても,レセプションによってその敵意が和らげられるという, レセプションの重要な機能が効力を発揮することになります.

伝統占星術において,これをなぜレセプションと名づけたかということは, 「レシーブ(recieve)」に「お客を迎える,歓迎する」という意味があることを 考えれば,ごく自然に納得できることです.天体Bが天体Aをレシーブするとは, 天体Bが,自分の家に来た天体Aを自分の客として迎えるということなのです. それには,天体Aが天体Bの家に入ることだけではなく,天体Aと天体Bの間にア スペクトが成立することで,天体Bが天体Aの存在を認め,受け入れることが必 要になるというわけです.

このように,Frawleyの言うところのレセプションは,伝統占星術におけるレセ プションとは異なるものです.Frawleyのレセプションの技法は,ディスポーズ という概念を使った技法と捉えれば,伝統占星術の枠組みの中で位置づけるこ とは可能であると見ていますが,それは私の仕事ではないので,深入りしませ ん.

Frawleyは,レシーブという言葉を緩く定義して,ディスポーズと同じ意味で使っ ているだけで,それは用語選びの問題に過ぎないと反論する人がいるかもしれ ませんが,それは的を射た反論とはなりません.これは単なる用語選びの問題 ではないのです.なぜなら,本来のレセプションとは異なるものをレセプショ ンと言うことで,本来の意味でのレセプションがホロスコープ解読において果 たす重要な役割が見過ごされ,レセプションの機能を正しく理解することを妨 げられる可能性があるからです.

私は,John Frawleyという占星家を尊敬していますが,彼の現時点におけるレセプションの捉え方は,伝統占星術におけるレセプションとは異なるものであると考えます. 彼の言うところのレシーブをディスポーズと読み替えるならば,Frawley独自の方法として,適用場面によっては,役立つテクニックであると認識しています.

レセプションの機能

先のエントリでは, レセプションが成立する条件について書きました.まとめておきます.

レセプション(Reception)
天体Aが天体Bによってレシーブされる(recieved),あるいは,天体Bが天体Aをレシーブする(receive)とは,
天体Aが位置するサインまたは度数において,天体Bがエセンシャルなディグニティをもち,且つ,天体Aと天体Bが合あるいはアスペクトをもつときを言う.
ただし,ミューチャル・レセプションの場合,すなわち,2天体が,互いがディグニティをもつ位置にある場合は,2天体が合あるいはアスペクトをとっていなくとも,レセプションと同様の効果が期待できる.

なお,天体が位置する場所において天体Bがディグニティともつといっても, どんなディグニティでも同じ効果をもつわけではなく,サイン・ルーラーとエ グザルテーションによるレセプションの場合に効果が大きいと言われています. トリプリシティ,ターム,フェイスといったマイナーなディグニティによるレ セプションの場合は効果が小さく,Bonattiなどは,マイナーなディグニティの みのレセプションが効果を現すためには,2種類のマイナー・ディグニティによ るレセプションが必要であると言っています.

さて,このエントリでは,ホロスコープ解読におけるレセプションの働きにつ いて,まとめておきます.以下のテキストを参考にしています.

Deborah Houldingの記事に あるように,Bonattiは,レセプションの働きに関して,次のように記述してい ます(Bonatti, Liber Astronomiae,Treatise III, the Second Part, Chapter XC).

天体Aが天体Bによってレシーブされるとき,天体Bは,天体Aに対して,自身の 影響力,性質,効力を委ね,授ける.([Planet B] commits and gives [to Planet A] its own disposition, nature and virtue)
………
たとえ2つの天体が敵同士であったとしても(even if the planets are hostile),天体Bは天体Aに対して影響力を与える.

「影響力」とか「効力」とか「委ね,授ける」とか,あまり良い訳ではないで す.これだけでは分かりづらいと思うので,もう少し具体的に説明してみます.

天体Aが天体Bによって支配されるサインに位置しているとします.天体Bによって支配されるサインというのは,天体Bがサイン・ルーラーとなるサインという意味でもよいし, 天体Bがエグザルテーションとなるサインという意味でもよいです.その心は,天体Bが力をもっている場所に天体Aがいるということです.

また,天体Aが天体Bによって支配される場所に位置するということの意味は,状況に応じて様々です. 天体Aは天体Bに関心をもっているのかもしれないし,天体Aは天体Bの管轄下で何かやろうとしているのかもしれないし, 天体Bは何らかの意味で天体Aに捕らえられているのかもしれません. いずれにせよ,ここまでは,天体Aが天体Bによって支配される場所にいるということに由来する解釈であって, レセプションとは関係のない解釈です.

このとき,天体Aが天体Bによって支配されるサインに位置していることに加えて, 天体Aと天体Bが合あるいはアスペクトをとっていると,レセプションが成立します. Bonattiの説明だと,「天体Bは,天体Aに対して自身の影響力,性質,効力を委 ね,授ける(commits and gives ts own disposition, nature and virtue)」 ということになるわけですが,どういうことかと言うと,天体Bは,自分が支配 する場所にいる天体Aに対して,「そこにいていいよ.君はウェルカムだ」, 「あなたの関心を受け入れますよ」,「君に僕の力を与えよう」,「君のため に僕の力を使ってあげよう」などと,天体Bは天体Aを受け入れ,手助けしてく れるようになるわけです.このことは,Deborah Houlding が書いているように,王様が,自分に従う配下の者たちに対して,思いやりの心をもち,彼らのために力を行使してやることとに似ています.

さらに,レセプションの重要な機能として,天体Aと天体Bが互いに敵意をもつ ような関係であっても,,天体Aと天体Bの間にレセプションがあれば,その敵 意を和らげることができるという機能があります.このレセプションの機能は, 伝統占星術の文献に何度も繰り返して現れます.天体Aが,マレフィックな天体 Bとスクエアであっても,天体Bが天体Aをレシーブしていれば,困難さは和らげ られるとか,あるいは,場合によっては事が成就する,といった具合です.

この典型的な例が,William LillyのChirstian Astrology, Vol.I, p.173にあ ります.Lillyは,ここで,「相手に要求したお金やモノを手に入れることがで きるか?」(相手にお金を貸していてそれを返してもらうような場合)という ホラリーを解読するルールについて説明しています.

詳しい解説は, Deborah Houldingの記事を読 んでいただくこととして, 簡単に説明すると,この状況では,質問者は1ハウス・ルーラーか月,相手は7 ハウス・ルーラーで表されます.相手のお金(質問者が手に入れたいもの)は, 8ハウスが管轄します.

Lillyは,まず,1ハウス・ルーラーあるいは月が8ハウス・ルーラー,8ハウス 内の天体とアスペクトするかどうかを見なさいと言います.もし,1ハウス・ルー ラーあるいは月が,8ハウス内の天体とアスペクトをとり,且つ,その8ハウス 内の天体が幸運な天体であり,アスペクトが調和的なアスペクト(トライン/ セクスタイル)であれば,事は成就します(お金は手に入ります),とLilly は言います.ここで,幸運な天体とは,単純には,状態のよい木星や金星を考 えればよいでしょう.

次に,1ハウス・ルーラーあるいは月が,8ハウス内の不運な天体や,8ハウス・ ルーラーとアスペクトをもち,且つ,8ハウス内の天体や8ハウス・ルーラーが 1ハウス・ルーラーあるいは月をレシーブするするならば,事は成就すると言い ます.ここで,不運な天体とは,単純には,土星や火星を考えればよいです.

さらに,1ハウス・ルーラーあるいは月が,8ハウス内の不運な天体や,8ハウス・ ルーラーとアスペクトをもち,且つ,8ハウス内の天体や8ハウス・ルーラーが 1ハウス・ルーラーもしくは月をレシーブしないのであれば,質問者が困難に出 会ったり,苦労をしたり,あるいは,事は成就しないであろう,と言います.

このホラリーのルールは,レセプションの機能をうまく使っています.すなわ ち,8ハウスは,相手のお金という意味の他に,危険とか困難とか,本来的に1 ハウスに対して敵対する意味をもっているため,8ハウス・ルーラーや8ハウス 内の不運な天体と,質問者自身を表す1ハウスルーラーや月がアスペクトをとる ということは,質問者にとって本来的に危険を伴います.その危険を回避する ためには,8ハウス・ルーラーや8ハウス内の天体が,1ハウス・ルーラーや月を レシーブすることで,1ハウス・ルーラーや月を受け入れ,手助けを与えること が必要です.そういったレセプションが成立すれば,8ハウスからの敵意は和ら げられるため,事は成就するというわけです.

このレセプションの機能については, Benjamin Dykesが, Skyscriptのフォーラムにおいて, 十字軍を扱った映画「Kingdom of Heaven」のシーンを使って,分かりやすい比喩を使って説明しています.正確には, Skyscriptのフォーラム を見ていただくこととして,簡単に紹介すると,

十字軍の二人人の王がサラディンに捕らえられ,サラディンのテントに連れ てこられた.サラディンは,二人の王のうち,一人の王に対しては,ゲスト として迎える心づもりで,王に氷水を与えた.ところが,サラディンがゲス トとして扱うつもりでない王もまた氷水を取った.その王は殺された.

サラディンが支配する場所に入った二人の十字軍の王のうち,一人の王はサラ ディン(8ハウスルーラー)にレシーブされているから無事だったけれど,もう 一人は,レシーブされていなかったので,殺された,という比喩です.

以上,レセプションの機能を説明しました.単に,天体Aが,天体Bによって支 配される場所に位置するだけではレセプションとは言わず,アスペクトがある ことによってはじめて,天体Aは天体Bの力の恩恵を受けることになります.

なお,最初に書いたように,レセプションがミューチャルなものであれば,アスペク トがなくても,レセプションと同様の機能をもちます.しかし,ミューチャル なレセプションがどういう意味をもつかをよく考える必要があります.1ハウス・ ルーラーと8ハウス・ルーラーがミューチャルなレセプションをもつことは,必 ずしも良いことではありません.上に書いたように,8ハウス・ルーラーが1ハ ウス・ルーラーをレシーブすることは好ましいですが,逆に,1ハウス・ルーラー が8ハウス・ルーラーをレシーブすることは,怖い人を自分の家に招いているこ となので,必ずしも良いことであるとは言えません.双方向のレセプションの うち,いずれが支配的な影響力を発揮するかは,状況によります.

レセプションはいつ成立するのか

伝統占星術におけるレセプション(reception)という概念について見ていきま す.まず,このエントリでは,レセプションが成立する条件について書きます.

以下のテキストを参考にしています:

伝統占星術といっても,17世紀以前の書き手の誰もが,全く同じことを書き綴っ てきたわけではありません.レセプションに関してもそうで,書き手によって レセプションの定義が異なっている部分もあります.しかし,全く首尾一貫し ていないかと言うと,そうではなく, Deborah Houldingの記事に あるように,,部分的な相違を除いては,レセプションが成立する条件に ついて,ほぼ共通項があります.すなわち,

レセプション(Reception)
天体Aが天体Bによってレシーブされる(recieved),あるいは,天体Bが天 体Aをレシーブする(receive)とは,
天体Aが位置するサインまたは 度数において,天体Bがエセンシャルなディグニティをもち,且つ,天体A と天体Bが合あるいはアスペクトをもつときを言う.

ここで強調しておきたいことは,レセプションが成立するためには,天体Aが 位置する場所(サインまたは度数)において天体Bがディグニティをもつだけ でなく,2つの天体が合あるいはアスペクトをもっていることが条件に含まれ ていることです.ただし,特筆すべき例外があって,それは,いわゆるミュー チャル・レセプション(mutual reception)の場合です.これについては後で触 れます.

レセプションの例を挙げておくと(Bonattiによる例です),月が牡羊3度にあ り,火星(牡羊のサイン・ルーラー)が双子8度にあるとき,月と火星はセクス タイルのアスペクトをもち,月は火星がサイン・ルーラーとなるサインにあり ますから,火星は月をレシーブする,あるいは,月は火星にレシーブされます.

これが,レセプションの成立条件の共通項ですが.書き手によっては,アスペ クトは接近のアスペクトでなければならないという条件をつける場合もありま す.また,天体Aが位置する場所で天体Bがディグニティをもっていると言っ ても,どんなディグニティでもよいわけではなく,サイン・ルーラーかエグザ ルテーションのいずれかのディグニティでないと十分には効果を発揮しないと 考えることが多いです.トリプリシティ,ターム,フェイスといったマイナー なディグニティだけだと,レセプションは成り立つけれども,効果は弱いと考 えるわけです.Bonattiは,サインのルーラーでもエグザルテーションでもなけ れば,トリプリシティ,ターム,フェイスのうち2つのディグニティをもって いないといけないと,細かく条件をつけています.

また,レセプションが機能する条件として,レシーブしている天体Bがデトリ メントやフォールといった力の弱い状態にあってはならないとか,レシーブし ている天体Bが,レシーブされている天体Aがフォールやデトリメントとなる 場所に位置してはならないといったことも言われています.

というように,書き手によって異なる部分や,より厳密な条件はつけられるこ とはありますが,レセプションが成立するためには,天体Bがディグニティを もつ場所に天体Aが位置するというだけではなく,2つの天体が合,あるいは, アスペクトをもっていることが条件に含まれていることは共通しています.

次に,ミューチュアル・レセプションについてです.ミューチャル・レセプショ ンとは,2つの天体が,互いがディグニティをもつ位置にあるときを言います. William LillyがChristian Astrology で与えているレセプションの定義 (Christian Astrology, Vol.I, p.112)は,ミューチュアル・レセプションで, 且つ,2つの天体がアスペクトをもつことは条件に含めていません.Lillyはア スペクトをもたない場合でもレセプションが成立すると書いているわけで,伝 統に照らして,これをレセプションと言ってよいのでしょうか.答えはYES です.

これは,Ibn EzraがGenerosity(Liberality)と呼んでいるもので,2つの天 体が,互いがディグニティをもつ場所にあるときは,2天体が合やアスペクト をもたなくても,レセプションは成立すると書き残しています(The Beginning of Wisdom, Chapter VII, Translated and Annotated by Meira B. Epstein,ARHAT Publications, p.125).

Lillyは,この伝統に沿って,Christian Astrology Vol.Iのミューチャル・レ セプションの定義を与えたのでしょう.あと重要なことは,Lillyは,なにも, レセプションとしてミューチャル・レセプションのみを考慮しているわけでは なくて,通常のレセプションである,片側のレセプション(当然アスペクトあ り)も扱っています.

以上見たように,2つの天体の間にレセプションが成立するためには,一方の 天体が,他方の天体がディグニティをもつ場所に位置することだけではなく, 2天体が合あるいはアスペクトをとっていることが原則です.しかし, 2天体が合あるいはアスペクトをとっていなくとも,レセプションがミューチャ ル(相互的)なものであれば,同様の効果が期待できるというわけです

では,レセプションはホロスコープ解読においてどのように使われてきたので しょうか.それは次のエントリで見ていきます.

レセプションに関わる議論

占星術の技法についての専門的な話題を書きます.

伝統占星術では,レセプション(reception)という概念が重要な役割を果たしま す.Deborah HouldingのSkyscriptに William Lilly のレセプションの用法について分かりやすくまとまった記事が あるので,必読です.

Lilly’s Use of Reception in Horary By Deborah Houlding

これに関連して,William Lilly以前の占星家によるレセプションの捉え方を比較した記事がこちらで読めます.

A brief comparison of the use of reception by historical authors By Deborah Houlding

Deborah HouldingがSkyscriptサイトでレセプションの解説記事を書いたきかっ けは,同じくSkyscript内のフォーラムで,レセプションについてのスレッドに 活発に投稿があり,その中でレセプションについての誤解があるということを, Deborah Houldingを含めて,何人かの人たちが指摘したことがきかっけです. 次のスレッドになります.

Skyscript.co.uk :: View topic - reception and essential dignities

このスレッドで,Deborah Houldingを含めて,何人かの人々が指摘したことと は,John Frawleyがレセプションと呼んで使っ ている技法は,William Lillyのレセプションの技法とも,他の伝統占星術の占 星家が使ってきたレセプションの技法とも異なるものであり,John Frawleyの レセプションをもって伝統占星術のレセプションの技法と言うのはおかしいのではないかとい うことでした.で,上に紹介したDeborah Houldingによるレセプションの解説 記事にいたるわけです.ほら違うでしょと.

Deborah Houldingは,John Frawleyのレセプションの技法が効果がないとは決 して言ってなくて,むしろJohn Frawleyによる別の方法(レセプションではない 方法)としては認めています.彼女はフェアーな態度を心がけているので.

彼女の言いたいことは,伝統的な技法ではないものを,伝統を語る文脈で,さ も伝統的な技法であるかのように提示するのは,誤解を生むということです. それは,John Frawley が現代占星術を批判してきた態度と矛盾しているだろうと. 上のスレッドを読めば,内容は分かります.

私にとって疑問なのは,なぜFrawleyスクールの人々が,これに対して,見える 場所で反論をしないのか,反論ができないのなら,そのことを認めないのか, ということです.私は,まだそれを見たことがありません.知っている人がい たら教えてください.上のスレッドでも,反論を試みた人はいましたが,尻す ぼみでした.もっと議論をたたかわせるべきであろうと思います.自分達の主 唱する核になる技法が批判にさらされているのであれば,それをディフェンス するのは当然です.

私は,John Frawleyという占星家を尊敬していますし,彼がレセプションと呼 ぶところの技法は有用な技法であると考えています.しかし,私も,彼の技法 はレセプションとは呼ぶべきではないと考えます.レセプションではなく,ディ スポジションのFrawley流の独特な使い方と捉えるほうが自然です.また,そう 捉えることで,彼がレセプションと呼ぶ技法を伝統の中に位置づけることは可 能であると見ています.それを具体的な議論として構成すべきは,John Frawley 自身か,その考えを受け継ぐ人たちの役割です.そのためには,異な る意見の持ち主や批判者に相対することが必要です.

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